ホーム > コラム > ESG投資元年(新年ご挨拶)

コラム
Column  l  コラム

  2016/1/4    TITLE : ESG投資元年(新年ご挨拶)
新年明けましておめでとうございます。
本年の皆様のご多幸を役職員一同祈念致しております。

  本年2016年は申年の中の丙申(ひのえさる)の年廻りであり、陰陽五行では、十干における丙は陽の火、十二支の申は陽の金で相剋(火剋金)とされる。
「火は金属を熔かすという意味」の火剋金は、「金の気を損なう事があるので火は金に剋つと意味」と捉えていわばマイナスの関係と考えて良いのだろう。しかし、陰陽五行では世界(宇宙の神羅万象)は相対的なものでありプラス面とマイナス面の両面があると教えている。従って、この火剋金もお互いに抑制する関係(すべてが熔けるというマイナス面だけではなく、金属は火に熔かされ金属製品として形を成すというプラス面)とも解釈される。つまり「相剋」の中に「相生」を見るという事だろうか。

  このような東洋的な思考の中には、宇宙の神羅万象を一面的な角度だけで見るのではなく、常に相対的な関係として捉える柔軟な思考が元来組み込まれているものと考える。つまり、言葉を換えれば「共に生きる」思想、日本的には「草木国土悉皆成仏」という天台思想にも通じるものを日本人は根源的に感じる事が出来るものと思う。

  昨年、世界最大の公的年金ファンドであるGPIF は国連責任投資原則(PRI)に遅まきながら署名をして、時代の趨勢である責任ビジネスへの関心を高めて、いわゆるE(環境)S(社会)G(統治)課題へ投資家としての取り組み姿勢を明確にした所だ。また、米国のERISA もそのガイダンス基準を昨年10 月に変更して、私的年金がESG 投資を行うことに受託者責任上の問題は無いことを明確にしている。つまり資産保有者としての機関投資家(年金ファンドや公益財団等)は持続性の高い社会の構築の為に、資産運用ポートフォリオの中にESG 課題の積極的な取り組みを促す流れがグローバルに生じている。

  ところで、ESG投資とは、概念的には①ESG観点を用いた非財務情報活用投資をいうもので、顧客の為に長期的利益(リターン)の最大化を企図するものである。②かかるESG課題の実現行動で持続可能性の高い社会の構築を支援する事を通して、社会に貢献する投資手法とも言えよう。③要するに、その理念は、投資主体と社会が当該価値を共有しその投資活動を通して社会貢献するという価値分担創造(CSV)の一形態と捉えて良いと考える。

  長期投資を考える際にはESGに関する多様な課題が企業の長期の収益環境情報に関連するという考え方が核心的な理念となっており、かかる課題を抜きに長期投資の戦略実践が困難になって来ている時代である。
このような、ESG課題は、日本人にとって本来的には当たり前の事であり、「共に生きる」という天台的な思想土壌からも今までも当然と捉えられていたものとは思う。ただし、実践的な投資活動としては不十分な結果であり、世界の潮流からは長く取り残されて来たものと受け止めている。

  しかし、ESG課題が企業の中長期的価値に影響する可能性があると考える以上、これらを考慮しない事がリスク制御上問題であり、ESG課題を考慮する事こそ受託者責任を全うする事となると考えるべきであろう。
「相剋」の中に「相生」を見ることは大変難しい課題であるとは思うが、革新力と創成は常に新しい時代の相剋の理念の中から生まれるものと信じている。
我々は「成長の限界」を超えた未来が開拓出来ないというグローバルな認識のもとにESG課題を考えざるを得ない時代に生きているのであり、本年は日本におけるESG投資元年とも位置付けたいと考えている。

以上




代表取締役社長 飛田 公治
<執筆者>
代表 飛田 公治

ライブラリー
 
Copyright © 2015 Tactical Asset Consulting Co.Ltd. All Rights Reserved.